修士論文要旨


氏名

半原 芳子

修了年度

2005年度(2006年1月提出)

修士論文題目

地域の「対話的問題提起学習」の実証的研究−非母語話者の問題提起場面に注目して−

要旨

(300字以内)

地域の母語話者住民(NS)と非母語話者住民(NNS)の共生を目指した「対話的問題提起学習」の実践上の困難点と課題を明らかにするため、NNSによってNSとの間で抱えている問題が提起されていながら対話が実現しなかったと解釈される場面を記述・分析した。その結果大別して、1,NNSの問題をNSが問題として認識しないパターン、2,NNSの問題をNSが問題として認識しても両者の間で問題の本質が共有されないパターン、のふたつが観察された。以上のことから、「自己を省察することの難しさ」「問題に対する客観的姿勢」「対話と普段のコミュニケーションスタイルの違い」の3点を対話の実現を困難にしている具体的な要因として提示した。

要旨

(1000字以内)

本研究は、地域の母語話者住民(NS)と非母語話者住民(NNS)の共生を目指して、地域日本語教育でその試みが始まっている「対話的問題提起学習」の更なる知見の蓄積に向けて、その実践上の困難点と課題を明らかにすることを目的とした。この目的を達成するために、実践の場において、NNSによってNSとの間で抱えている問題が具体的に提起されていながら対話が実現しなかったと解釈される場面を取り上げ、聞き手であるNSがその問題をどのように受けとめ両者の間でどのようなやりとりが展開されていたのかを記述・分析した。その結果、大きく二つの特徴的なパターンが観察された。

第一は、NNSによって提起された問題がNSによって問題として取り上げられず、両者の間に対話の土俵が成立しなかったものである。これはNSが、NNSが提起した問題を、問題として認識しなかったためであるが、その認識のし方からさらに以下の四つに下位分類することができた。:1.問題が一般的なものとして扱われる;2.問題が偶然的なものとして扱われる;3.問題が冗談、かつ他人事のように扱われる;4.問題が提起者の思い込みで、実在しないものして扱われる。

第二は、NNSによって提起された問題が問題として取り上げられ、話し合いの土俵がつくられるが、問題の本質が共有されずじまいになるものである。これは提起者であるNNSが問題としていることと、聞き手であるNSが問題として認識したことの間に食い違いがあり、その食い違いが埋められないまま次の話題に移行してしまうもので、対話をしているようでいながら実は対話が実現されていなかったものと言えるものである。

分析結果を踏まえて、本研究は、対話を困難にしている要因として「自己を省察することの難しさ」「問題に対する客観的姿勢」「対話と普段のコミュニケーションスタイルの違い」の3つを提示した。これらは「対話的問題提起学習」という場が規定する難しさであり、NSとNNSの間で生起する問題の実質的解決に向けて対話を実現するためには、対話に臨む両者が、場の特性を認識し、対話をつくっていくという姿勢を涵養していくことが必要であることを示唆した。以上を踏まえて、本研究は、「対話的問題提起学習」の実践上の困難点を明らかにするとともに、その対応に向けた具体的な示唆を提示したと考える。

要旨

(2000字以内)

 

修論発表会要旨

 

 


最終更新日 2006年3月20日