修士論文要旨


氏名

テンヂャローン=モルンタイ

修了年度

2005年度(2006年1月提出)

修士論文題目

電話会話における初級日本語学習者の「聞き返し」ストラテジーの使用について―JSLタイ語母語話者学習者の場合―

要旨

(300字以内)

本研究ではJSLタイ語母語話者初級日本語学習者を対象にし、学習者の「聞き返し」の使用実態と効率性、それぞれの発話意図に適した表現形式、「聞き返し」の連鎖について研究を行った。結果は学習者が発話意図に適した表現形式を使用できていないため、「聞き返し」の成功率が低くなった。そのため、学習者が「聞き返し」ストラテジーをうまく使用するためには、どの発話意図にどの表現形式を使用すれば効率的なのかを考えながら指導することが大切である。また、日本人の学習者への配慮がスムーズな会話への手助けになるため、本研究を通して日本人にも外国人が使用する「聞き返し」について意識を持ってもらいたい。

要旨

(1000字以内)

本研究ではJSLタイ語母語話者初級日本語学習者を対象に、学習者と日本人の電話会話を分析して研究を行った。これまでの「聞き返し」ストラテジーの先行研究では、学習者の「聞き返し」の発話意図と表現形式に焦点をあてており、学習者が発話意図に適した表現形式を使用しているか、また、どの発話意図に対してどの表現形式が効果的なのかについては研究されていないため、本研究では学習者と日本人のフォローアップ・インタビューを基に、学習者の「聞き返し」の使用実態と効率性、それぞれの発話意図に適した表現形式、「聞き返し」の連鎖について考察を行った。

本研究では、学習者が発話意図に適した表現形式を上手く使えておらず、「聞き返し」の成功率が60.6%であった。そこで、どの発話意図にどの表現形式が適しているのかを検証した結果、「全文反復要求」には動詞型、「部分反復要求」にはエコー型、「聞き取り確認要求」にはエコー型の丁寧型、「理解確認要求」には言い換え型またはエコー丁寧型、「説明要求」には間投詞型の「何ですか。」または、エコー型+αの「〜は何ですか。」が効果的であることが分った。また、発話意図が2つある「聞き返し」の場合は、一回の聞き返しで2つの発話意図を伝えることが難しいので、「聞き返し」の方法を工夫する必要があることが分った。

次に、「聞き返し」の連鎖についてだが、連鎖が生じる原因には@学習者の「聞き返し」の発話意図が伝わらなかったために連鎖が起きた場合とA学習者の「聞き返し」の発話意図は伝わったが確認を行うために連鎖が起きた場合の2つがある。「聞き返し」の連鎖により聴解上の問題が解決できた例も多かったが、説明要求や発話意図が2つある「聞き返し」は成功までに何度も「聞き返し」を要することがあった。また、「聞き返し」の連鎖により聴解上の問題が解決できない際には、遠慮が生じて話題転換する場合が多く観察された。さらに、連鎖の中で「聞き返し」が成功しないために「聞き返し」を回避する例も見られた。

学習者が「聞き返し」をうまく使用できるようになるためには、どの発話意図にどの表現形式を使用すれば効率的なのかを考えながら、表現の丁寧さにも考慮して指導することが大切である。また、日本人の学習者への配慮がスムーズな会話を導く手助けになるので、本研究を通して日本人にも外国人が使用する「聞き返し」について意識を持ってもらえれば嬉しく思う。

要旨

(2000字以内)

 

修論発表会要旨

 

 


最終更新日 2006年3月20日