2008年度 2010年度

21年度活動報告会
日時 平成22年3月8日
テーマ各班の事業活動とその成果についての発表
労働・家族班からは、来年度の量的調査を念頭においたプレ調査として、「女性のキャリア形成と家族、男性の家事・育児参加」をテーマに、女性を中心に働いている方々、および企業に対するインタビュー調査を行った。子育て期の働き方の調査としては当学附属校の父母に対しアンケート調査を行った。発達心理班は、ワーク・ライフ・バランスと子育て期の家族の関係をQuality of Lifeの視点から考察を行った。法政策班は、韓国・フランスの海外事例研究を中心に報告。ロールモデル班は福井県の女性活躍社会の取り組みについてのアンケート調査結果についての報告があった。
       
テーマおよび発表者
1.労働班・家族班
今年度の活動報告  石井クンツ昌子
1) 働く女性へのインタビュー調査報告
 「女性総合職・基幹職の職業キャリアと出産」 山谷真名
 「女性の就労継続の要因」「女性の就労と子育ての責任」 佐野潤子
 「非正規という働き方」 蟹江教子
2) 企業ヒアリング調査報告
 「育児取得者(時短利用者)のいる職場における仕事の運営について」林葉子
3) 附属学校質問紙調査から(女性)
 「附属校の調査概要分析」 キム・スヒョン
4) 附属学校質問紙調査とインタビュー調査から(男性)
 「男性の育児・子育て家事参加に関する研究報告」林葉子 佐々木卓代 中川まり
2.発達心理班
 「ワーク・ライフ・バランスをめぐる子育て期の家族構成員それぞれの課題」松浦泰子
3.法政策班
 「法・政策班2009年」 申キヨン
4.ロールモデル班
 「福井県におけるワーク・ライフ・バランスと『女性躍進社会』の推進」舘かおる 吉沢寿香 土野瑞穂
第三回 国際シンポジウム (ワークショップ)
 
日時 2010年1月8日(金)14時00分~16時00分
場所お茶の水女子大学 本館 1階 135号室(カンファレンスルーム)
テーマ”Work and Family Balance in the U.S.A.”
講師 J.エリザベス・ミラー教授(アメリカ ノーザンイリノイ大学 准教授)

ミラー先生の研究領域は、家族理論と家族の危機である。
Work and Family Balanceについて講義するというより「刺激」をキーワードに討論したいとの意向から、まず、クイズ形式で、アメリカのWork and Family Balance(WFB)に関する現状を紹介した。 アメリカでは
・家庭の50%が離婚を経験しており、その片方は85%の確率で再婚していること。
・計画しない妊娠が妊婦の5割を占めること。
・現在6歳未満の子どもの8割が18歳まで単親世帯にいると予想されること。
・アメリカの労働人口の50%は女性であること。
・10代の若者の3分の1が20歳になる前に少なくとも1度は妊娠していること。
・米国では法定の有給休暇はなく1993年の立法でようやく病児や病欠による無給休暇が法定で認められたが、それも50人以上を雇用する企業に限られており、有給で病欠をとれる者は、労働者の半数程度であること。
さらに、Work and Family Balanceのバランスの概念についての説明と、それに影響する要因の複雑性や相違性について述べられた。
  
・ アメリカは、様々な人種がいるので、それぞれの家族は、彼ら自身の文化的、歴史的背景の影響を受けている。世帯も一人親かどうかなど背景が複雑なので、女性が働くことの影響や意味はさまざまである。
・ 子どもを持ちながら働くことは大変困難である。しかし社会保障に依存できるのは2年間だけとなった。その後の保障はない。貧しくて働かなければならない母親の子どもは、十分にケアされていない。
・ 平等の教育を受け、専門性をもっていても、平均では女性は男性の77%しか賃金をもらっていないし、平等意識の強い男性でも、家事分担は十分にできていない。
・ 現在は、post feminismの反発から、回帰現象が起こっており、主婦になってもいいと思っている若い女性もいる。
・ 女性にとってバランスとは何か?→家族とライフと仕事のバランスが見つけられない。
→バランスとはharmony? 公平さ?というのは本当か?
→多くの女性は常に動いている。
・ WFBを構造主義的視点で考察すると、バランスにいかに到達するかに焦点があたってしまい、WFBに到達していない自分について、働く女性の多くは、「なにかをしなくてはいけない、問題があると思ってしまうことになる。
・ その変化の様子や、文化的背景や環境の違い等、大きな社会的レベルと個人レベルなど、ダイナミックシステムとして立体的にとらえ、Ecological Circleのそれぞれが変化しつづけているという捉え方をするほうが女性のWFBの現実に近い。
・ バランスという到達点がある、いつかそのポイントに到達するであろうとするバランス神話を排斥し、そういうポイント、すなわち目標にするというのではなく、バランスは、毎日行われる交渉のなかで、生み出される役割アイデンティティである。到達すべきものではない。
・ 構造機能主義から離れ、アイデンティティやコンテクストをいれて解釈すべき。


第7回全体会議
日時 平成21年12月1日
テーマ「若年者就業問題について―職業教育訓練(VET)関係を中心にして―」
【講師】岩田克彦氏(職業能力開発総合大学校 教授)
若者、特に文系大卒や高卒の就職内定率の低さ、パートや派遣から抜け出せないという現状、収入格差は広がり中間層が減っているという現状について統計資料を用いて報告された。欧州のVET(―職業教育訓練)は、職業高校や訓練校と企業とが連携して教育訓練を実施しており、CVET(継続職業教育訓練)とIVET(初期職業教育訓練)が連動していること、デンマーク等では、VETがシステマティックに行われ、プログラム数も多数あり、自分に合わないと判断したときにはやり直せるような仕組みとなっていること、また、企業が共同で基金をつくり、給料をもらいながら実習をうける制度があることなどが紹介された。日本については、これまでの企業内教育中心から企業外での人材育成システムの抜本的強化が必要なこと、またジョブカード制度、ジョブカフェなどの取り組みの現状が報告された。
テーマ「連合の男女平等政策について~活動と取り組み~」
【講師】篠原 淳子氏 (日本労働組合総連合会 生活福祉局長)
連合の活動内容と役割について説明され、非正規労働センターや、女性役員参画の取り組みなどについて報告があった。男女平等政策については、男女間の賃金格差の実態把握と是正への取り組み、男女平等関連労働法の改正後のフォローアップとして、改正育児・介護休業法の周知徹底や、改正均等法の定着の促進などの活動が報告された。また、連合がめざすワーク・ライフ・バランスにもふれ、基本的考え方として、ディーセント・ワークが保障されていると、働く側にとって選択可能な働き方であること、子育て・介護支援の社会的基盤の確立などが挙げられた。
 
第二回 国際シンポジウム (ワークショップ)
ドイツ・ギーセン大学のウタ・マイヤー=グレーヴェ教授をお招きし、ドイツの家族とジェンダー政策の現状について お聞きしました。その後日本との比較を中心に大いに討論を行いました。
日時 2009年9月24日(木)14時00分~16時30分
場所 お茶の水女子大学 本館315号室
テーマ”Family-Gender-Economic Policy. A New Alliance”
講師 ウタ・マイヤー=グレーヴェ教授 Dr. Uta Meier-Grawe
ギーセン大学 家政学・消費調査研究所教授。旧東ドイツ・フンボルト大学 家族社会学博士取得。 「家族と社会における子どものためのドイツ連盟」副会長、ザーラント州議会「人口構造変化」調査委員会委員などを歴任、 2007年8月メルケル首相等と来日、日独国際交流事業にて「人口構造変化と家族政策」に関する基調講演を行った
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講演要旨
日本とドイツでは、共通する部分も多く、旧西ドイツでは稼ぎ手の夫と専業主婦の妻という片働きの家族をモデルとしてきた。ドイツでは、どの世代でも「家族を持ちたい」 と思う人は多く、家族志向が強い。しかし一方で、25~35歳の若い世代では、子どもがいなくても良いと考える人が増えており、理想と現実が乖離している。高学歴の男女は 子どもの数が少なく、経済的に恵まれていない男女は多くの子どもを持つようになっており、不平等が生じている。経済的、社会的、文化的資源があり、子どもを十分に養育 できる人は子どもを持たず、そうではない人が子どもを持つという現象が起きている。またドイツ社会は母性神話が強かった。教育ではかなり男女平等が進んだが、いったん 結婚して子どもを持つと家事育児面を含めた男女平等は成立していないため、女性は失望してしまう。高学歴の女性を労働力化することについての議論はタブーであったが、 男女の賃金格差など、企業や経済界も徐々に取り組むようになってはきた。政府は色々な政策を実施したが、いまだ少子化は進んでいる。
     
今、育っている子どもたちは私たちの老後や介護を担う存在である。そのことを理解し、貧困層の子どもに対して、社会的な負担を上げる必要がある。 またわれわれは、北欧の家族政策など、自分の国よりも優れている国の政策をみることも必要だと思う。ドイツは2007年にスウェーデンに習って親手当てを導入し、男性が 休業した場合に一定の所得保障を実現した。その結果、父親の休業取得が増えた。父親の育児参加が必要である今日、イデオロギーについて議論するのではなく、家族にとって 何が必要か、そのための制度のあり方について論じることが大事だろう。
     
第一回 国際シンポジウム (公開講座)
日時 2009年6月15日(月)
今年度はワークライフバランスに詳しい研究者を海外からお招きし、国際的な視点で日本のワークライフバランスについて洞察を深めてまいります。 その第一回目の公開シンポジウムを6月15日、お茶の水女子大学にて行い、学内外の70名の方々に来ていただきました。今回のテーマは「フランスの家族政策」 フランス国立科学研究機構研究部長のジャンヌ・ファニャニ氏をお招きし、本講演ではフランスの現状について、また日本との比較を討論会にてお話いただきました。
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テーマ
講演会の部
 ”French Family Policies and the Work/Family Life Balance Issue”
 講師 ジャンヌ・ファニャニ Dr. Jeanne Fagnani(CNRSフランス国立科学研究機構研究部長)
CNAF家族手当全国金庫の研究責任者、EC欧州委員会の家族政策専門委員を歴任。EU各国の比較政策研究を数多くこなし、 最近ではドイツとフランスの家族政策の比較分析とそれぞれの出生率と母親の就業形態への影響について注目している。
講演要旨
フランスの家族政策とワーク/家庭生活との両立への課題
1945年以降、フランスでは、家族を「社会的一体性を維持するのに重要な役割を果たしている社会的機関」として法的に認め、家族政策を系統だって制度化してきた。 1970年代から、徐々に母親が労働市場に出現し始めたことが、フランスの家族政策において、子どものいる賃金労働者に対する広範な各種サービスの導入を促し、 それらが、双方向に影響しあって、さらに、仕事に就く母親の数も増加していった。
1990年代以降では、社会経済的抑制と失業の上昇が主に児童保育政策における変革を推進し、未就学児のために保育手当が支給されるという劇的な進展を導いた。 フランスは今や、家族のための保育コストを下げることを目指す公的な児童対策や保育手当において欧州連合をリードしている。
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討論会の部
  「ジェンダー格差是正の点から見たフランスの家族政策」
  討論者 神尾真知子氏(日本大学 法学部教授)
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   シンポジウムポスター    ダウンロード(pdfファイル サイズ:679KB)
第6回全体会議
日時 2009年4月14日
テーマ「企業と家族からみたワーク・ライフ・バランス」
松田 茂樹氏  第一生命経済研究所 主任研究員
「企業における両立支援の現状と課題」
企業における両立支援の背景や非正規雇用の拡大による就労者全体のWLBの変化などの問題点が提起された。企業が取り組むべき優先課題として、勤務時間を短縮し、過重労働を削減し、一人でも多く雇用すること、仕事をシェアするべきであることなど指摘され、日々の両立を支える施策の充実、企業のコスト負担の軽減、社会的分散の必要性等今後の方向性が紹介された。
石井クンツ昌子氏 (お茶の水女子大学 大学院人間文化創成科学研究科 教授)
「家族視点のワーク・ライフ・バランス」
ワークやライフの定義の曖昧性や明確化する必要性が指摘された。家族視点からみたWLBが紹介され、日本の男性の就労・育児・家事における問題点や女性の就労継続の難しさ・育児・家事の過重負担などがあげられた。さらに、日米比較や国際比較の観点からも男性の家事・育児を規定する要因が紹介された。今後の課題として、WLBの満足感の定義や尺度作成、法政策に還元可能な調査をするための概念の変数化の必要性などが指摘された。
 
 
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