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1. 小風秀雅(お茶の水女子大・教授)
「19世紀の不平等条約と東アジア−不平等条約体制の機能について−」
 本報告は、19世紀中葉に欧米と東アジアの間に形成された不平等条約体制の機能について明らかにした。この体制は、アジアでは、植民地化を狙った侵略の 体制であるとされているが、条約は経済的利益を確保することを主眼としたものであり、欧米列強は、東アジアの諸国に国家主権を認めることで、東アジアとの 関係を安定的かつ円滑に継続することを目指していた、と結論した。ただ、協調を目指す不平等条約体制が近代世界システムのなかのサブシステムとして機能し ていたというのは欧米からの視点であり、東アジアの関係の中でみると機能は異なるとした。

2.李志炯(淑明女子大・助教授)
「韓国での日本文学受容の意味−1980年代以降を中心に−」
  本報告は、現在の韓国での日本小説ブームを理解するために、韓国において日本文学がどのように受容されてきたか、を概観し、さらに島崎藤村の「新生」を取 り上げて、植民地と女性の象徴的なオーバーラップ、二重の他者としての植民地女性について論じた。最後に、文学の危機をめぐって、大衆から疎外され研究が 行われていることが問題であり、文学研究と教育の場をどのように接合すべきかに課題があるとした。
 日本文学受容については、文学そのものの良さに対してというよりも、ただ熱狂的な感覚を文学に対して持つことや、売れればよいというような社会的現実に は、違和感があるとし、このような現状に対し、文学教育が重要な役割を果たすのではないかとした。

3.古結諒子(お茶の水女子大・院生)
「日清戦争下の外交関係−「三国干渉」への道」
 本報告は、日清戦争の開戦から「三国干渉」に至る列強と日本の外交交渉過程を明らかにすることによって、世界史的な視点から日清戦争を再考した。当時の 外交関係の基調を反露親英と理解する通説に対して、列強の反対のなかで日清開戦に持ち込むために、日本は列強の利害対立を利用しており、イギリスの意向に 沿って開戦に持ち込んだのではないこと、また三国干渉の際、イギリスは裏で手綱をひき、ロシア・フランスはそれに追随していたことを指摘し、事実上の四国 干渉であった、とした。

4.朴玟宣(淑明女子大・院生) 
「1945年〜1953年の‘在日’マイノリティ−運動の研究現況と課題 −在日本朝鮮人連盟と沖縄人連盟を中心に−」

 本報告は、日本の中のマイノリティ−である、‘沖縄人’と‘在日朝鮮人’を取り上げ、彼らが「他者」という位置からどのように自己規定したかという問題 から日本の戦後社会を考察しようとする問題意識に基づいて、研究の状況をまとめたものである。
 質疑応答のなかで、‘在日’と‘沖縄’2つの比較を行うことによって、何を明らかにしようと考えているのかという質問に対し、報告者は、日本におけるマ イノリティ−は戦前戦後を通してその構造は変化していないことを指摘し、日本は戦後に、平和国家・民主主義を柱に掲げたが、その裏にいるマイノリティ−を 通すことによって、その本質を明らかにしたいと答えた。





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Last Modified 2006/04/14     責任 者:古瀬奈津子 担当者:久米彩子