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1. 神田由築(お茶の水女子大・助教授)
「歌舞伎『勧進帳』の背景−『杖で打たれる』ということ−」

 本報告は、歌舞伎「勧進帳」にみられる弁慶が義経を「杖で打つ」という行為が持つ社会的意味の検討を試みたものである。
日本においては杖で打たれる(杖を負う)ことが喧嘩によって雪がなければ回復できないほどの恥辱であったこと、しかし同時代の朝鮮ではそうした感覚がな く、この違いに起因する対馬藩通詞による朝鮮通信使殺害事件(1764年)が起きていること、しかし、日本でも近代になると恥辱の感覚が忘れられていった こと、が指摘され、近世日本と現代の日本、近世の日本と朝鮮の文化の違いが明らかにされた。

2.申裕媛(淑明女子大・院生)
「肥前名護屋城とその城下町について」

  本報告では、朝鮮侵略の際に豊臣秀吉が築城した肥前名護屋城の築城過程や技術、城下町の構造について検討した。
名護屋城は、築城技術としては安土城・大阪城と同様の近世的な特徴を有しているが、石垣の積み方や平地に建設されていないこと、都市と農村部が入り交じっ ていること、城下町にはただの職人町ではなく武器に関わる町名が多いことこと、などを指摘して、中世・近世2つの時代の特徴がみられることが明らかにされ た。

3.朴晋雨(淑明女子大・助教授)
「民間レベルでの日韓交流になにが必要か」

 本報告は、民間レベルでの日韓交流を推進してきた経験を踏まえて、相互理解を深めるための前提として、歴史認識の問題、文化的な相違性に対する理解、地 域間交流のあり方、「隣語」に対する関心、の4つを挙げ、日韓の違いをどのように乗り越えていくか、についての提言がなされた。
 質疑応答のなかで報告者は、自分の国に対する愛国心があるように、それぞれの国にも愛国心があることを認めて相互に理解することが重要であると述べ、民 間レベルでの日韓交流のプログラムは金銭的には困難だが、今後も「平和」と「人権」を柱として続けていくつもりであると述べた。

4.大矢悠三子(お茶の水女子大・院生)
「鉄道の開通と「湘南」イメージの形成−海水浴の受容と発展との関連を軸に−」

 本報告は、「湘南」(神奈川県の相模湾沿岸地域)の地域イメージの形成過程について、海水浴が西洋医学の受容とともに始まったこと、横浜居留地の外国人 の影響により別荘化が進んだこと、から西洋イメージが強調されたことを指摘した。また、東海道線の開通とともに相模湾沿岸に海水浴場が林立し、さらに江ノ 島電気鉄道(江ノ電)の開通(藤沢・鎌倉間)によって、東藤沢・江の島・鎌倉という周遊ルートが確立して大衆化が進んだことにより、「湘南」イメージが確 立した、とした。




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Last Modified 2006/04/14     責任 者:古瀬奈津子 担当者:久米彩子