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「魅力ある大学院教育イニシアティ ヴ」によるシンポジウム

 18〜19世紀、江戸から東京へ:都市文化の構築と表象

 概 要

 江戸時代(1603年〜1867年)に日本に生まれた都市文化は、江戸、大阪、京都の三都市で確立した。 18 世 紀はじめから19世紀を通して、新首都江戸、明治時代(1868年〜1912年)の到来とともに東京となったこの大都市の影響は、日本文化全体の発展を決 定付け、そしてこれを育んだ。このシンポジウムでは、一般的な見解からこの現象を分析するよりも、当時の多くの歴史的な資料を読み、解釈することで、より 具体的な面に着目し、民衆の間で起こったこの動きの重要性とその性質について明らかにしたいと思う。こうした都市文化の開花、その変遷と永続性に付随する 都市の構築と様々な表象を、歴史、芸術、社会、宗教といった多分野にまたがる視野から観察する。また比較研究として、当時のコレクションや書物の紹介を通 して、フランス、そしてヨーロッパにおいて、この現象がどこのどのように受け入れられたかを理解していきたいと思う。

 こうした都市という背景の形成を解き明かす最も顕著な性質のいくつかを明るみに出すために、以下の主要なー マを扱う。

1.まず、日本とヨーロッパにおける書物、挿絵、そしてとりわけ首都の名 所−地理、建築、祝祭行事など−を描く観光案内書といった出版物やその受容を通して、都市江戸-東京の様々な表象を分析する。
したがって、以下の事柄が考察される。

 江戸に関する書物と旧都、京都に関する書物の影響力、その内容および形式に表れるそれぞれの違いについて明 治 期、近代化の道をたどる東京に影響を及ぼし、場所の概念を覆した、社会と都市の発展について、18、19世紀の日本の首都の伝統と新しさに対する建築のか かわりと西洋の眼差し

2.18、19世紀の江戸-東京の都市空間に組み入れられた芸能、信仰、民間伝承の基となった社会的背景を歴 史的、芸術的な観点から分析、検討する。
よって、以下の事柄が考察される。

 18世紀から19世紀初頭にかけて、都市空間と江戸の庶民文化の認識に介入した、妖怪への信仰について。当 時 の絵、演劇、文学に関する書物や日記が、都市の様々な場所と、江戸市民の想像に住みついた妖怪とのつながりをいかに表しているかを見ていく。

 江戸の芸能について。江戸の都市内部では、縁日の見世物、歌舞伎、人形浄瑠璃といった大衆的な娯楽が都市住 民 の生活のリズムを作っていた。様々な資料を読みながら、この時代に特有の芸能文化を優遇した社会的背景や、江戸の都市のさまざまな場所についてみていく。 芸人、パトロン、聴衆を結び付けていたものは何だったのかを検討しつつ、江戸特有の祝祭事や芝居の世界が、どのように国全体に広まっていったのかをみてい く。そして最後に、ヨーロッパと日本に保存されている、首都の芸能を描き、表象する絵本、挿絵入りの資料を検討する。



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Last Modified 2006/01/10 責任 者:高島元洋 担当者:久米彩子