修士論文要旨


氏名

小林 智香子

修了年度

2008年度(2009年1月提出)

修士論文題目

TV会議システムを用いた国際遠隔授業に対する評価
−文化を取り入れた総合的日本語教育のために−

要旨

(300字以内)

 本研究はTV会議システムを用いた国際遠隔授業に対するJFL環境にある日本語学習者の評価を明らかにし、文化を取り入れた総合的日本語教育として有効か検証することを目的とした。授業に参加した日韓双方の学生のうち、本研究では韓国側学生を対象とした。その結果、韓国側学生は言語学習・文化学習のツールとしての国際遠隔授業を高く評価していることが明らかになった。ツールの質を高めることが授業理解の深化にとって不可欠な要素であることが示唆された。また、韓国側学生は豊富な表現力の獲得や聞き取る力の向上、日本語の資料読解や生活・研究における語彙の獲得に関して評価が高いことが明らかになった。さらに、この授業に対して、日本文化に関する新たな知識を獲得し多角的視点を涵養する場と考え継続的な授業参加への希望が強いこと、文化学習に有効であると考えていることが示された。これらの結果より、国際遠隔授業は、文化を取り入れた総合的日本語教育として韓国側学生に有効であるという結論に達した。

要旨

(1000字以内)

 グローバル時代を迎えた現在、日本語教育の流れは言語のみに焦点を当てた教育ではなく、文化を取り入れ、かつ実践的な「総合的日本語教育」へと向かいつつある。本研究は、文化を取り入れた総合的日本語教育がJFL環境にある日本語学習者の日本文化理解を深めるのか、JFL環境にある日本語学習者は日本語学習と日本文化学習の融合という観点からこの授業をどのように評価するのかを実践的に検証することを目的とした。
 本研究の分析対象はTV会議システムを用いた国際遠隔授業(以下「国際遠隔授業」とする)である。国際遠隔授業には日韓双方から学生が参加したが、本研究では韓国側参加者(某大学学生23名、以下「韓国側学生」とする)を対象とした。調査方法は5段評定法による質問紙、記述式アンケート、及び構造化によるインタビューである。質問項目は「ツール」、「日本語学習」、「総合的日本語学習」の3カテゴリーを設定し作成した。
 その結果、「ツール」については、韓国側学生は言語学習・文化学習のツールとしての国際遠隔授業を高く評価していることが明らかになった。また、韓国側学生はこの授業において、そのツールの質すなわち画像・音声の重要性を認識し授業理解に影響があるととらえていることが示された。TV会議のツールを用いて総合的日本語教育に基づく授業を行う場合、ツールの質を高めることが授業理解の深化にとって不可欠な要素だと考えられる。
 「日本語学習」については、向上が期待される言語4技能について最も多かったのが「話す」、次いで「聞く」であった。また、韓国側学生はこの日本語学習と日本文化学習とを融合させた授業について、豊富な表現力の獲得や聞き取る力の向上、日本語の資料読解や生活・研究における語彙の獲得に関して高く評価していることが明らかになった。さらに、日本語学習と日本文化学習の重要性を強く認識し、その融合にも肯定的であることが示された。
 「総合的日本語教育」については、韓国側学生は、国際遠隔授業において疑問点をその場で解決できること、発表や討論により個人における文化認識の多様性を実感しながら理解を深化させることが可能であると考え、授業を高く評価していることが明らかになった。また、この授業を日本文化に関する新たな知識の獲得、多角的視点を涵養する場と考え、継続的な授業参加への希望が強いことが示された。
 以上のことから、国際遠隔授業は、文化を取り入れた総合的日本語教育として有効であるという結論に達した。

最終更新日 2008年3月○日