修士論文要旨


氏名

石原 翠

修了年度

2008年度(2009年1月提出)

修士論文題目

留学生の友人関係における期待と否定的認識との関連、及び満足度に関する研究

要旨

(300字以内)

 本研究では留学生の友人関係期待と否定的認識の関連を明らかにした。その結果、「対等な協働」期待と「被差別感」、「関係形成の障害感」の各認識、「共行動」期待と「関係形成の障害感」認識、及び「類似」期待と「関係形成の障害感」認識との間には負の相関が見られた。
 また、「相互支援」期待と「言語コミュニケーションの障害感」認識、「アジアへの関心」期待と「被差別感」、「関係形成の障害感」、「日本人学生のアプローチ欠如感」、「興味・余裕の欠如感」、「言語コミュニケーションの障害感」の各認識、及び「個人への関心」期待と「興味・余裕の欠如感」、「言語コミュニケーションの障害感」の各認識との間には正の相関が見られた。

要旨

(1000字以内)

 日本の留学生数は大幅に増加し、2007年には11万人を超えた。特に、外国人留学生、大学院生については、高度海外人材としての期待も高まっている。その中で、留学生と日本人学生との対人関係上の困難が、大きな課題として注目されている。 しかし、留学生が、日本人学生に対して、どのような友人関係期待を持ち、どのような体験から否定的な認識を持つようになるのかという観点からの検討や、どのような要因が、友人関係満足度に影響するのかについては、十分に検討されていない。こうした問題意識から、本研究では、4つの研究課題を設定し、質問紙調査の結果に基づき、分析を行った。
 課題1の友人関係期待については、因子分析の結果、対等な協働、学業・生活支援、共行動、自己開示、相互支援、アジアへの関心、類似、個人への関心の8因子が見出され、滞在期間が長くなるほど、対等な協働、自己開示、相互支援、類似の要因について、留学生が失望していくことが示された。
 課題2留学生の友人関係に関する体験の否定的認識については、因子分析の結果、被差別感、関係形成の障害感、日本人学生のアプローチ欠如感、協働の不成立感、興味・余裕の欠如感、言語コミュニケーションの障害感、自文化への関心の欠如感、交流不全感の8因子が見出された。
 課題3友人関係期待と体験の否定的認識の関連については、複数の因子間で相関関係がみられ、友人関係の期待と体験の否定的認識の要因が、相互に関連していることが示された。特に、アジアへの関心は、被差別感、関係形成の障害感、日本人学生のアプローチ欠如感、興味・余裕の欠如感、言語コミュニケーションの障害感、の5要因と正の相関関係にあり、相互に関連が深いことが示された。
 課題4友人関係満足度と友人関係に関する体験の否定的認識の関連については、重回帰分析の結果、被差別感がなく、日本人学生からの友人形成アプローチがあり、協働が成立しており、日本人学生から自文化に対して、関心が払われていることの4要因が、友人関係満足度に影響を与えている要因であることが見出された。
 以上より、留学生が、日本人学生との友人関係に求める要因や条件が明らかになり、交流支援の一助となる結果が得られた。

最終更新日 2008年3月○日