修士論文要旨 |
氏名 |
滝脇 万寿子 |
修了年度 |
2007年度(2008年1月提出) |
修士論文題目 |
美術系大学院で学ぶ留学生に関する研究 −インタビューを通し明らかになったこと− |
要旨(300字以内) |
本研究では美術留学生の留学動機から研究生活を通し留学というものを考察し、19名のインタビューデータをKJ法で解釈を行なった。自分を変えたいという動機は留学により新たな広がりを作り目的を見つけ達成していく面を見出せた。日本語に関する問題は自分の作品意図を日本語で説明する難しさを示していた。留学に導かれている大きな要因として人的影響が挙げられた。家族や大学時代の先生、友人に触発され日本に興味を持ち、来日後は大学院で教師、仲間との人的リソースをもとに展覧会や海外との交流展等ネットワークを内外で作り活動の幅を広げている。美術系留学生はこのように人的影響力との関わりが強く重要であることが示唆された。 |
要旨(1000字以内) |
本研究では美術系留学生のインタビュー通し、日本留学の動機、研究生活における日本語に関する問題点、また研究生活から何を得また将来を考えているか、ということを明らかにし、美術留学生の日本留学というものを考察することを目的とした。19名に半構造化インタビューを行い、そのインタビューデータをKJ法により解釈し明らかにした。研究課題として@日本留学に動機付けられているものは何かA日本語をどう捉えているかB留学生活から何を得、また将来を考えているか、の3点を設定した。@の留学の動機として挙げられた今の自分を変えたいという思いは、留学後展覧会など開催し、留学したことで新たな広がりを作り、人に認められていることによって、目的を見つけ達成していく一面を見出せた。また一方、日本の伝統技術の憧れからの動機で来日したものは、大学で学び、伝統技術を身につけ現代アートへと結びつける上で、伝統に縛られず乗り越えようとする過程での葛藤も見うけられた。Aの日本語に関しては問題として発表、説明といった自分の作品を日本語で説明することの難しさを示していた。またコンセプトを説明して伝えることの必要性を感じていると同時に視覚作品を言語で説明する矛盾を抱えていた。B日本留学で得たこととして自分が作った作品の意図を伝える大切さを学びとっていた。そして制作活動を通し自分のこと、母国などアイデンティティーを考えるきっかけとなっている。また考え方、ものの見方の変化、広がりを挙げ、このような気づきや気持ちの変化は作品作りにも影響を与えていた。将来に関しては、生計を立てることと、やりたいこととの矛盾もかかえている。 KJ法から得られた仮説的知見として日本留学に導かれている大きな要因として人的影響が挙げられた。まず家族の影響から美術の道へと進み、大学時代の先生の指導や出会に触発され日本に興味を持ち、また友人からの留学の情報などがきっかけで留学を考え来日している。留学後は大学の研究室やアトリエというコミュニティーの中で教師、仲間との人的リソースをもとにグループ展、海外との交流展、公募展などネットワークを内外で作り、活動の幅を広げながら制作活動を行っている。このような学生生活での過程で得たことは修了後の進路へと大きく影響してくる。 美術系留学生はこのように人的影響力とのかかわりが強く、重要であることが示唆された。 |
最終更新日 2008年3月11日