修士論文要旨


氏名

園田 智子

修了年度

2006年度(2007年1月提出)

修士論文題目

大学院留学生の研究生活における困難度と関連要因

要旨

(300字以内)

 本研究は、日本の大学院で研究生活をおくる大学院留学生に焦点をあて、その研究生活上の困難度と関連要因について明らかにすることを目的とした。質問紙調査法によって大学院留学生175名のデータを分析した。その結果、困難度の因子として、「研究基礎力」「教員との人間関係」「日本人学生との人間関係」「研究への不安」「日本語力」「経済的困難」の6つが見出され、様々な困難さを抱えていることがわかった。中でも「研究不安」は、研究への効力感や研究環境との関連も深く、克服の難しい困難さであり、また教員や日本人学生との人間関係と関連が深いことから、個人の問題だけではなく、周囲の理解や支援が必要であることが示唆された。

要旨

(1000字以内)

 日本の大学院における留学生数は2005年には3万人を超え、全大学院生の2割弱が留学生という状況になってきており、近年の少子化の問題からも大学院留学生(以下院留学生)を高度な専門知識を持つ人材として期待する声も高まってきている。しかし、実際の院留学生が研究生活の上でどのように困難を感じているのか、実証的に検証された研究は少ない。そこで、本研究では、日本の院留学生が、研究生活上でどのような困難さを抱えているか、またその困難さと関連のある要因を明らかにすることを目的とした。具体的な研究課題は、課題1院留学生の研究生活における困難さにはどのようなものがあるか、課題2属性の違いによって困難度に差があるか、課題3研究困難度と、研究への効力感、研究環境に関連が見られるか、である。これらを明らかにするために、日本で研究を行っている院留学生175名に対して質問紙調査を行い、分析を試みた。
 その結果、課題1において院留学生の研究困難度は、研究基礎力、教員との人間関係、日本人学生との人間関係、研究への不安、日本語力、経済的困難の6つの因子からなることがわかった。次に属性ごとに分析を行った結果、理系と文系では、文系の院留学生において研究基礎力や研究不安に困難度が高いこと、博士と修士のでは、修士の院留学生に研究基礎力の困難度が高いことがわかった。また、滞日期間と困難度の関係では日本語力や研究基礎力のような学習可能なものに相関が見られた。さらに、日本語力の低い院留学生は日本人学生との人間関係に困難度が高いことも明らかなった。研究課題3では、研究困難度と研究への効力感、研究困難度と研究環境にそれぞれ負の相関が見られた。特に研究への効力感と研究不安及び教員・日本人学生との人間関係、研究環境と研究不安及び日本人学生との人間関係に相対的に強い相関が見られた。このように、院留学生は、心理的な問題も含めた様々な困難を抱えており、中でも研究不安は、研究への効力感や研究環境との関連も深く克服の難しい困難さであり、また教員や日本人学生との人間関係とも関連が深いことから、個人の問題だけではなく、周囲の理解や支援が必要であることが示唆された。今後は、大学院留学生と日本人大学院生との比較、個に対応した質的な研究も進め、研究生活を難しくしている原因を明らかにしていくことが必要である。

最終更新日 2007年3月11日