修士論文要旨


氏名

島崎 美穂

修了年度

2005年度(2006年1月提出)

修士論文題目

日本人従業員と中国人通訳者のビジネス場面における意識のずれ―中国の日系メーカーを対象に―

要旨

(300字以内)

中国の日系メーカーにおける中国人通訳者(以下、CI)と日本人従業員(以下、JE)の意識のずれの所在を明らかにするため、質問紙調査を行った。その結果JEとCIの「通訳者(CI)に対する意識」において「性格的資質」「控えめな存在感」「プロ意識」「プライド・責任感」「葛藤」はJE<CI、「関係構築」のみがCI<JEで、双方の意識にずれが認められた。また、CIのJEに対する期待と、JEの実践の構造を調査した結果、「中国に対する理解」「日本に関する助言」「心理的ストレスの軽減」については期待と実践が一致していたが、JEの日本語の話し方に関してずれが見られた。これらの結果からJEとCIには通訳業務の位置付けに関してずれがあり、それが期待と実践のずれにつながっていることが示唆された。

要旨

(1000字以内)

近年日系企業の中国進出が進み、日本人従業員と中国人従業員がともに働く職場が増えつつある。しかし、日本人従業員の多くは中国語ができないため、日本語のできる中国人従業員が時折通訳者(Chinese Interpreter , 以下CIと称す)として、日本人従業員(Japanese Employee , 以下JEと称す)の意思疎通の橋渡しを担うことになる。近年中国の日系企業においてはCIの能力不足などが問題とされているが、CIの立場や意識についてはほとんど考慮されておらず、JEとCIの意識について量的に調査した研究もなされていない。そこで、本研究ではJEとCI双方の意識のどこにずれが生じているのかを明らかにするために、中国の日系メーカーに勤務するJE106名、CI101名を対象に質問紙調査を行い、分析を試みた。研究課題は次の5つである。1-1通訳者(CI)に対する意識の構造を明らかにする 1-2  JEとCIの、通訳者(CI)に対する意識に差があるか 2-1 CIのJEに対する期待の構造を明らかにする 2-2 CIの期待に対するJEの実践の構造を明らかにする 2-3 CIの期待の構造と、JEの実践の構造に差があるか

その結果、研究課題1において、JEとCIの通訳者(CI)に対する意識は「性格的資質」「控えめな存在感」「関係構築」「やりがい」「プロ意識」「プライド・責任感」「葛藤」という7つの因子から成り、うち6つの因子に有意差が認められた。「関係構築」因子においてのみCI<JEであったが、「性格的資質」「控えめな存在感」「プロ意識」「プライド・責任感」「葛藤」因子においては、JE<CIであった。また、研究課題2の「CIのJEに対する期待の構造」と「JE実践の構造」は、「中国に対する理解」「日本に関する助言」「心理的負担の軽減」という部分は一致していたが、JEの日本語の話し方に関してCIの期待の構造が「全体的な話し方への配慮」「わかりにくい表現への配慮」であるのに対し、JEの実践は「語彙レベルの話し方への配慮」「概念レベルの話し方への配慮」という構造から成り、ずれが認められた。この研究課題1,2の結果より、CIは通訳業務を自分の業務だと認識し、業務をきちんと遂行できるような話し方をJEに期待しているのに対し、JEはCIの通訳業務について明確に位置付けていないため、自らも話し手という立場でCIと協力して通訳業務を進めようとしていることが双方のずれとなっていることが示唆された。今後は、JEの「CIに対する期待の構造」および「CIの実践の構造」を明らかにし、JEとCIの期待と実践のずれの構造について双方向から検討していくことが必要である。

要旨

(2000字以内)

 

修論発表会要旨

 

 


最終更新日 2006年3月20日