修士論文要旨


氏名

薛 倩

修了年度

2005年度(2006年1月提出)

修士論文題目

読解力と読解ストラテジー使用の関係―中国人日本語学習者の場合

要旨

(300字以内)

読解力と読解ストラテジー使用の関係について検証した。中国の大学2年中級日本語学習者150名を対象に、読解力(内容再生得点・多肢選択問題得点)×読解ストラテジー(ボトムアップ・ストラテジー(BU)・トップダウン・ストラテジー(TD)・テストテイキング・ストラテジー(TT))の2要因計画で実験した。結果は内容再生得点の上位群の読み手がTDの使用程度が高かく、多肢選択問題得点の上位群の読み手がTTの使用程度が高かった。また、本研究で内容再生と多肢選択問題両方の得点が上位群に入った読み手を読解力の高い読み手とし、両方の得点が下位群に入った読み手を読解力の低い読み手とした。読解力の高い読み手はTTの使用程度が高かったと同時に、BUとTDをバランスよく使うことによって、よりよく文章理解を果たすことができた。

要旨

(1000字以内)

読解力とは文字で書かれたテクストを読むことを通して、書き手の意図する意味内容を理解すること(天満1989)と言われている。読解力向上のために日本語教育現場において、新しい読解指導の試みが行われてきており(岡崎・中條1989 伊藤1991など)、指導項目として、読解ストラテジーが取り上げられるようになってきた。しかし、中国では読解ストラテジーが学習者達に明示的に教えられることはあまりなく、ストラテジーの獲得は個々の学習者の試行錯誤、もしくは素朴な判断に委ねられているといえよう。

本研究は、読解における中国人日本語学習者の読解ストラテジーの使用実態を明らかにし、その使用の程度と読解力との関連を検討した。研究課題は以下の2つである。日本語テクスト読解において:

研究課題1 内容再生課題の結果とボトムアップ・ストラテジー(以下、BU)とトップダウン・ストラテジー(以下、TD)の使用程度の間にはどのような関係があるか。

研究課題2 多肢選択問題課題の結果とテストテイキング・ストラテジー(以下、TT)、ボトムアップ・ストラテジー、トップダウン・ストラテジーの使用程度にはどのような関係があるか。

対象者は中級レベルの中国人日本語学習者150名で、読解力(内容再生得点・多肢選択問題得点)×読解ストラテジー(BU・TD・TT)の2要因計画で実験した。研究課題1を検討するために内容再生課題とアンケートを用い、研究課題2を検討するために多肢選択問題とアンケートを用いた。

分析の結果、研究課題1:内容再生得点の高い読み手が内容再生得点の低い読み手よりTDの使用程度が高い。また、内容再生得点の高い読み手がより多くTDを使うことによって、内容再生得点の低い読み手より、テクスト内容の再生率が高く、主要IU・重要IU・詳細IUの各階層の再生も高かった。研究課題2:多肢選択問題の達成度の高い読み手は達成度の低い読み手よりTTの使用程度が高い。

この結果を受けて、本研究では、読解力の高い読み手を、TTの使用程度が高いと同時に、BUとTDをバランスよく使うことによって、よりよく文章理解を果たすことができる読み手という定義を提案した。

第2言語の読み手を対象に、読解ストラテジーを読解授業に取り入れることは、読解力の高い読み手を養成するのに有効な手段であることを示したことにあると考えられる。

要旨

(2000字以内)

 

修論発表会要旨

 

 


最終更新日 2006年3月20日