修士論文要旨


氏名

郭 旻恵

修了年度

2005年度(2006年1月提出)

修士論文題目

第二言語環境におけるある韓国人家庭の母語保持及び育成

要旨

(300字以内)

本研究では、第二言語環境である日本社会に滞在し、言語バイタリティの強い日本語と弱い母語の挟間で、子どもに対して二言語の両立を望んだ韓国人家庭が母語保持および育成にどのように取り組んでいったかを見るために、ある韓国人家庭を研究の協力者とし、インタビューを行った。インタビューデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用い分析した結果、5つのカテゴリーが抽出された。母語保持・育成のプロセスとして、「子どもの母語と日本語の使用」では、子どもの言語が滞在期間の長期化につれ、日本語の使用が多くなる過程が、「日本語に対する父母の期待と言語実践」では、子どもの日本語習得に対して親は期待感から読み書き指導を行うに対し、母語に対しては漠然な期待感をもち、特段の言語実践は行われなかったことが分かった。「日本社会への適応過程」では、父母は子どもに対し、韓国人であることから疎外感や不便を感じないように配慮しながらも、日本社会に慣れてほしいという期待を持つ。「父母の家庭内での母語使用」では、子どもの家庭内での言語が母語から日本語へシフトしても父母が一貫して母語を使用し、「母語保持・育成への動機付け」では、韓国への一時帰国が親にとっては子どもの母語を確認する機会に、子どもにとっては母語習得の動機付与の機会になったことが見られた。

要旨

(1000字以内)

近年、日本では定住化・長期滞在の傾向である外国人児童生徒が持つ様々な背景の考慮と児童の母語保障の権利や多言語の発達の視点から「母語」の保持・育成を念頭にいれた支援や研究が徐々に行われるようになった。研究の結果から、子どもの母語力の低下や母語喪失の傾向は見られているが、個々がおかれた状況や言語少数派の家庭の中で子どもに対する親の期待やその社会の中で感じる自分の母語に対する意味づけ、そして、母語保持・育成の主体となる子ども自身はどのように感じ、母語に向かい合っているのかに対する丁寧な検証が必要だと思われる。

そのような背景から、本研究は第二言語環境にある日本社会に滞在し、言語バイタリティの強い日本語と弱い母語の挟間で子どもに対して二言語の両立を望み、母語を維持しながら日本語の能力も伸ばすことに一定程度成功したある韓国人家庭を協力者に母語保持・育成にどのように取り組んで行ったかを明らかにすることを目的とする。この家庭の選定理由は、10年という長い時間を日本で滞在したこと、来日した当時子どもが幼児であったこと、日本に滞在した当時は母語保持・育成の主体の児童であった成人を協力者とすることで直接、当時の体験や考えをインタビューでとることが出来た。本研究のデータは半構造化インタビューを行い、そのデータは修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(修正版M-GTA)を用いて分析を行った。修正版M-GTAの分析から5つのカテゴリーが抽出された。

5つのカテゴリーは、まず、1)「子どもの母語と日本語の使用」で、子どもの言語使用の変化の過程がみられた。最初は母語を習得していた子どもは、滞在期間が過ぎるにつれ、徐々に日本語へ変化していく過程をみることができた。2)「日本語に対する父母の期待と言語実践」では、子どもが日本語を習得する際、父母は子どもの言語習得に対し、期待感を持ちそれを背景に日本語の読み書きの指導を行う。しかし、母語に対しては漠然とした期待感を持ち、読み書きの指導はなされていなかったことが分かった。3)「日本社会への適応」では、父母は子どもに対し、韓国人であることから疎外感を感じないように配慮しながらも、日本社会に慣れてほしいという期待を持つ。4)「父母の家庭内での母語使用」では、子どもの家庭内の使用言語が日本語にシフトしても父母が一貫して母語を使用し、5)「母語保持・育成への動機付け」では、韓国への一時帰国が親にとっては子どもの母語を確認する機会に、子どもにとっては母語習得の動機付けの機会になったことが見られた。

要旨

(2000字以内)

 

修論発表会要旨

 

 


最終更新日 2006年3月20日