関連文献リスト

 
 

■「帰国者児童の受け入れ学校教師からみた諸問題」

小坂守孝・箕口雅博・斎藤正彦 
1996『移住と適応 中国帰国者の適応過程と援助体制に関する研究』
439−451 日本評論社

学校場面における中国帰国孤児二世の適応状況について、
二世の担任教師に対するアンケート調査を中心にして明らかにし、
知的レベル、帰国時の年齢、性別、中国での学校経験、
来日後の転居などが来日後の適応状況に影響するか否かを検討している。
来日時11歳以下だった児童について、その親と担任教師に対してアンケートや
面接調査を行い、その中でいくつかの事例を取り上げ、今後の具体的な援助の形について考えている。



■「異文化間サポートネットワークの形成 中国帰国者二世青年の場合」  

安場淳 
1996 『移住と適応 中国帰国者の適応過程と援助体制に関する研究』
453−469 日本評論社

学校教育を経ないため、その異文化接触の実態がなかなか把握しきれないと言われる
中国帰国者二世青年を対象に、彼らの日本における社会的関係の実態を明らかにしようとした研究。
日本人との異文化間サポートネットワークの形成状況に焦点を当て、
彼らの社会的・経済的・文化的なバックグラウンドを踏まえ、日本人との関係の現状を鋭く指摘している。
帰国者に対する異文化適応教育の現場への提言となっている。


                                            
■「異文化社会への適応形態―中国残留邦人帰国者2世を中心とした事例研究」

下山田梨辺果 
1997 日本女子大学人間社会研究科紀要 第3号  123−133 
 
2世を中心とした中国残留邦人帰国者子弟という一つの社会集団の実態を社会学的に明らかにし、
実態の把握を通じて異質社会へと移動してきた社会集団の適応過程を構成する要素を抽出しようとした研究。
@「社会的キャリア」と「人的環境」の再構築、が適応状況に大きく影響する 
A同じ中国出身者との社会関係を一定程度共有することにより、様々な問題の解決に対応できるようになる、
という2つの仮説をたて検証している。



■「ある「中国帰国者」における家族―適応過程程に生じた家族の葛藤―」

鄭暎惠  
解放社会学研究2 92‐107

在日朝鮮人の鄭暎惠氏が自身とはまた違った形態で在日する中国帰国者について、
家族という切り口からその適応過程を追っている。3つの家族の事例を挙げ、個々の適応、
家族の中の関係、母国中国への想いなど、非常に鋭く観察・分析をしている。受け入れ側の
日本が持つ「同化圧力」が、中国という背景を持つ帰国者の存在様式を否定しているということ、
また現代の家族のあり方の変化が帰国者家庭にも影響を及ぼしていることを指摘している。


■「中国帰国者の「子どもたち」―異文化環境への適応と自己の模索のなかで―」 

鈴木智之 
解放社会学研究2 108‐125

中国帰国者の「子どもたち」に焦点を合わせ、彼らが日本社会という異文化環境に
適応していこうとする時、同時に彼らが自らの文化的・民族的な自己をいかに
形成していこうとしているのかを考察し、この2つの課題の実現過程において
生じつつある問題について検討している。その問題とは、日本の持つ同化圧力による
日本化のジレンマであると指摘、適応力が優れている子どもだからこその「葛藤」があるとしている。


■「中国帰国生徒の学校における準拠集団について- 学校における言語集団という視点」

清田 洋一 東京大学総合文化研究科言語情報科学専攻における博士課程論文の要旨
http://www.kikokusha-center.or.jp/resource/ronbun/kakuron/ronbun_f.htm

中国帰国生徒の受け入れ校の都立高校で帰国生徒の担任と受け入れ担当をしていた著者が、
学校という教育現場における中国帰国者、つまり残留孤児や婦人の二世や三世の適応の問題を
「個と集団」という視点から考えている。



■「秋田県能代日本語学習会の実践記録
−中国帰国者および外国籍住民の少数在住地域における支援について─1」
 藤田美佳
1999 中国帰国者センター紀要 第8号 

全国には50名以下の帰国者定着地域は18県あり、全国で約4割の県が
中国帰国者の少数在住地域であるという現実があるが、中国帰国者が
多数在住する地域に対して、少数在住地域の事例に関する研究・報告は非常に少ない。
少数在住地域は、多数在住地域がおかれた状況と異なり、
地域や学校による体系的な取り組みがあまりとられていない上、
日本語を母語としない人々はもちろん、支援者にとっても入手可能な情報は
非常に限られたものになる。 このレポートは、1996年10月から1999年3月まで
ボランティア学習支援者として秋田県にある「能代日本語学習会」に関わり、
主に学齢期の子どもたちを担当していた筆者の体験と、
会の代表者からの聞き取り調査をもとに報告されている。



■「中国帰国生徒と高校進学−言語・文化・教育・排除−」

鍛治致 『中国帰国者』をめぐる地域社会の受容と排除に関する比較社会学的研究』蘭信三代表 
平成7年〜平成9年度科学研究費補助金 研究成果報告書
http://www.kikokusha-center.or.jp/resource/ronbun/kakuron/ronbun_f.htm

『中国帰国者』をめぐる地域社会の受容と排除に関する比較社会学的研究』蘭信三代表
平成7年〜平成9年度科学研究費補助金 研究成果報告書
中国帰国青少年たちが日本社会で学校に通い、進学するその過程において、
言語や文化といったものがどのような役割を果たしているのかを考察している。
中国で確実に「学力」を培ってきた帰国生徒は、日本では「正当」に評価してもらえず、
その結果、日本では進学の「大通り」から排除されてしまうと指摘。中学校教師、
帰国青少年たちの声や書き綴ったものを手がかりに、我々が彼らの教育権をどのように考え、
サポートしていくことができるか、課題を投げかけている。



■「中国帰国者子女の母語喪失の実態―母語保持教室に通う4名のケースを通して―」

斎藤ひろみ 
1997『言語文化と日本語教育』

中国帰国者の二世・三世の世代が母語である中国語と日本語のセミリンガルになり、
どちらの言語も十分に使えないと言う問題が指摘されているが、このレポートでは4人の
帰国者子女を対象にインタビューと教室での言語活動の観察記録をデータとして母語喪失と
日本語獲得の実態を記述、母語喪失を促進する要因を探っている。その結果、口頭能力と
読み書き能力には差があり、読み書き能力のほうが喪失しやすいこと、過程での母語使用だけでは
母語保持は困難であること、来日時の読み書き能力の有無が母語保持か喪失かを決定する
要因の一つと考えられる、と考察している。



■「バイリンガル教育の可能性―中国帰国生の大学進学との関連において」

友沢昭江 
桃山学院大学総合研究所『国際文化論集』第22号
http://www.kikokusha-center.or.jp/resource/ronbun/kakuron/ronbun_f.htm

中国帰国者の日本帰国を望む大きな要因の一つに、子や孫の進学が挙げられる。
しかし、義務教育を終えた後の高校進学や大学進学が必ずしもうまく行っていないという現実がある。
近年、日本語習得だけでなく、学力を向上させることを進学を念頭においた教育の重要性が
指摘されているが、このレポートではバイリンガル的要素を取り入れて成果を上げている
大阪府立高校での事例を紹介し、言語マイノリティー生徒の力強い学力形成(empowerment)の可能性を考えている。



■「バイリンガル能力の発達における社会文化的影響の研究 
―中国引揚者の子弟の言語環境を事例として―」

清田洋一
東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士課程準備論文
http://www.kikokusha-center.or.jp/resource/ronbun/kakuron/ronbun_f.htm

これまで日本はほぼ単一言語社会として、海外からの移住者に「同化」を強いてきたが、
近年の新たな言語集団の問題を抱え始めている。それはただ「日本語教育」だけの問題に留まらず、
彼らの社会文化的アイデンティティーの確立といった問題と切り離すことはできない。
この研究では、中国帰国生を対象に、社会言語学的アプローチと教育心理学的アプローチの
両者の視点から、特にこれまでの言語習得のモデルでは特定されなかった社会文化的要因、
特に多数派言語と自グループとのグループダイナミズムが個人内の態度や動機付けに
どのように影響を与え、実際の言語発達として出現するのかを明らかにしている



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