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お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科 比較社会文化学専攻 表象芸術論領域
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表象芸術論領域研究発表会を開催しました。

 去る2012年10月10日、表象芸術論領域では研究発表会を開催しました。
 当日のプログラムおよび発表要旨は下記の通りです。

開催日: 2012年10月10日(水曜日)18:10〜18:40
会場: 文教育学部2号館110室
発表: 山下暁子 比較社会文化学専攻表象芸術論領域(音楽)
題目「現在のタイ音楽の伝統 -ルアン・プラディット・パイロ財団の活動を例に-」

現在のタイ音楽の伝統 -ルアン・プラディット・パイロ財団の活動を例に-  山下暁子

 ルアン・プラディット・パイロ หลวงประดิษฐไพเราะ (本名ソーン・シラパバンレン ศร ศิลปบรรเลง, 1881-1954)は、タイ音楽の巨匠として現在のタイでも広く認知され、タイ音楽の象徴的存在である。現在、彼の孫であるマリネー・サーカリック มาลินี สาคริก 氏が理事を務めるルアン・プラディット・パイロ財団では、その弟で財団の副理事を務める ชนก สาคริก チャノック・サーカリック氏によるタイ音楽の教室が開かれている。
 本発表では、フィールドワークによって得られた情報を元に、ルアン・プラディット・パイロの伝統を引き継ぐ者としての財団におけるチャノック氏の活動を例として、現在のタイにおける、タイ音楽の伝統のあり方の一形態として考察することを目的としている。
 ルアン・プラディット・パイロは、タイ音楽家の父や兄の元で幼少の頃より楽器の演奏に親しみ、貴族のパトロンに支えられながら宮廷音楽家として活躍した。国王に認められ、官位ルアン及び欽賜名プラディット・パイロを与えられる。演奏家として新しい演奏法を生み出しただけでなく、音楽の形式を整え、それを多くの弟子たちに伝えたことで、それまで作曲家という存在があまり重要視されてこなかったタイにおいて、タイ音楽の偉大な作曲家として認識されるようになる。2004年には、彼の伝記を元にした映画『ホムロン โหมโรง 』〔風の前奏曲〕が公開されている。
 ルアン・プラディット・パイロ財団では、ルアン・プラディット・パイロに関する資料の保存や情報の提供、演奏会や儀式の主催といった活動のほか、ルアン・プラディット・パイロの孫であるチャノック・サーカリック氏がタイ音楽の教授を行っている。彼とその生徒たちは、テレビやインターネットといったメディアへの積極的な露出によって、タイ国内では非常に有名な存在である。チャノック氏は、伝統的なスタイルによる教授も続ける一方で、数字譜という記譜法を考案し、また、タイ以外の国の楽器を取り入れ、そのために作曲を行うなど、新しいやり方でタイ音楽を発信しようとしている。
 こうしたチャノック氏の活動は、常に新しい演奏法や音楽形式を生み出し、「作曲家」として多くの曲を残し、さらに「教師」としてそれらを多くの弟子に教えることによってタイ音楽に貢献した、ルアン・プラディット・パイロの意志を受け継いでいると言える。

(注)本文中に、閲覧環境によって表示できない文字(タイ語)が含まれます。

チャノック氏とその生徒たち(2009年9月26日、発表者撮影)
チャノック氏とその生徒たち(2009年9月26日、発表者撮影)

表象芸術論領域研究発表会担当 柴眞理子 中村美奈子

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